平成22年(ワ)第743号 損害賠償事件 原 告 有限会社スタック 被 告 岡山放送株式会社ほか2名 2010年8月20日 準備書面(1) 岡山地方裁判所第2民事部2B係 御中 原告訴訟代理人 弁護士 位 田 浩 本準備書面は、被告らの答弁書第3(被告らの主張)に対する認否・反論を行うとともに、求釈明の申立 を行うものである。 記 第1 被告らの主張に対する認否・反論 1 第1項(事案の経緯)について (1)同項(1)平成21年1月下旬について 被告岡山放送が被告菊井を通じて次年度について報道番組に関する委託料を10%カットしたいと提 示してきたことは認めるが、その余は否認する。 なお、優位的地位にある岡山放送からの提示に対し、原告会社はそれを拒否できるような地位にはな い。 (2) 同項(2)同年2月27日について 否認する。 被告岡山放送が被告菊井を通じて提示してきた内容は、次年度について報道のカメラマンを5名から2 名削減し3名とする、「スーパーニュースSPA」の制作については委託しない、その他報道で別注していた 業務も注文しないというものであった。原告代表者は被告菊井からそのように聞いている。また、同被告 から、削減対象とすべきカメラマンについて、深水と橋本という名前が上がっていた。 (3) 同項(3)3月4日について 認める。 (4) 同項(4)3月4日について おおむね認める。 被告岡山放送が削減を求めていたカメラマンは、深水と橋本であったことから、原告代表者は被告菊井と 協議し、社員に対する給与カットを発表することにより妻帯者である両名に対して退社を促すとともに、被 告菊井に対して当該2名以外については退職しないよう根回しをすることを求めた。しかし、被告菊井 は、原告代表者の指示に反してそのような根回しを行わず、逆に、自らが率先して、被告OEPや被告岡 山放送と通謀して主要なカメラマンの引き抜き実行したのである。 (5) 同項(5)3月6日について 原告代表者が原告会社の社員に対し、被告岡山放送による契約条件提示などの経緯を説明し、事 業を継続していくために希望退職者を2名募集すること、残る社員の給与についても減給の可能性があ ることを発表し、退職希望者は同月9日までに被告菊井に申し出るよう伝えたことは認める。また、同日 に被告菊井と池田取締役とが面談したことは認めるが、その余は否認する。 原告代表者が被告菊井と池田取締役とが面談していたことを知ったのは後日のことであり、その内容は 、被告OEPが原告会社のカメラマン3名(被告菊井、半田、平井)と梅谷を引き取って救済するという話で あった。 (6) 同項(6)3月9日について 原告代表者が被告OEPの木村良徳代表取締役及び池田取締役と面談したことは認めるが、その余 は否認する。 原告代表者は、被告OEPから仕事を回してもらったり、あるいは原告会社のスタッフを入れてもらったり できるのかを聞いてみたが、池田取締役らはこれを拒否した。その際、池田取締役は原告代表者に対 し、突然「ぶっちゃけた話、(原告会社の社員)全員を引き取ることはできないが、引き取る用意はある)と 言って、あたかも原告会社の社員を引き抜くかのような口吻を漏らしたのである。 (7) 同項(7) 3月10日について 原告代表者が武本局長と黒田部長と次年度の契約条件について面談したこと、面談時に被告菊井 が原告代表者にに対し「社員が全員辞めたいと言っている」と連絡してきたことは認めるが、その余は否認 する。 面談においては、黒住部長が「被告菊井に言ってあるとおり、報道カメラマン2名を削減する、SPA制作 の発注をしない、その他の別注もしない」と回答してきたので、原告代表者は「再考の余地はないのか」と 重ねて尋ねたが、黒住部長は「決定ですから(交渉の余地はない)」と答えた。また、その際、黒住部長 は「社員を路頭に迷わせないようにしてあげてください」と述べた。 (8) 同項(8)3月14日について 被告菊井が「社員全員辞めたいと言っている」と述べたことは認めるが、その余は否認する。このとき、 被告菊井は「被告OEPから救済の話があり、被告OEPが社員を何人か引き取ってくれるので、頼んで みる」と言ってきた。 (9) 同項(9)3月16日について 認める。 黒住部長は、翌17日、被告菊井をはじめとするカメラマン5名(半田、平井、難波、橋本)及び梅谷の 6名を被告岡山放送又は被告OEPが引き取ると答えていた。 (10)同項(10)3月24日について 認める。ただし、梅谷は同月28日に退職願を持ってきた。 (11)同項(11)3月25日について 否認する。 黒住部長が平成21年4月1日付念書を持参し、原告代表者に対してそれに押印するよう求めてきた のは、3月18日ころのことである。 (12)同項(12)4月以降 否認ないし不知。 2 第2項について 争う。 被告らは、被告菊井ら原告会社の社員全員が退職を希望し、4月以降の契約継続が困難となった 後になって、被告岡山放送及び被告OEPはそれを知り、被告菊井らを採用したかのように主張する。 しかし、被告らの主張は失当である。 原告代表者は、3月4日時点において、被告菊井との間で、深水と橋本を退職させるか解雇することに よって人件費を抑制し、また、他の諸経費の削減や原告代表者を含む社員全員の給与カットによる経 費削減により業務を継続していくこと、被告菊井において深水・橋本以外の社員には退職しないよう根 回しをした上で希望退職者を2名募集することを確認し、3月6日に社員全員に発表したのである。 ところが、希望退職者の募集を発表してからわずか4日後の3月10日に、被告菊井は、原告代表者 に対し、「社員が全員辞めたいと言っている」と連絡してきた。社員の全員が次の就職先のあてもないまま 退職を希望することなど考えられないところである。しかも、希望退職者の募集の公表に先立って、被告 菊井が原告代表者に連絡を入れることもなく被告OEPの池田取締役と密談していることからすれば、遅 くとも3月6日時点において、被告菊井は、被告岡山放送や被告OEPから雇用確保ないし業務委託の 約束を得て、社員を引き抜くことを画策していたとみるほかない。 さらに、社員全員の退職に向けた被告菊井の動きは、被告岡山放送や被告OEPからの働きかけ及 び支援がなければ到底なしえないことからすれば、被告らが相通じて、原告会社の社員を引き抜いたこと は明らかというべきである。 第2 被告らに対する求釈明の申立 被告らに対し、次の事項について求釈明を求められたい・ 1 被告らは、3月4日に原告代表者が被告菊井に対して2名(深水・橋本)以外の社員が退職しない よう根回しをするよう支持したことを認めている。 そこで、次の事項について明らかにされたい。 (1)被告菊井が各社員(難波秀明、平井大典、半田幹男、梅谷桂子)に対して上記内容の根回しを 行ったかどうか。 (2)もし根回しを行ったとすれば、その時期、場所、内容を社員ごとにそれぞれ具体的に明らかにされた い。 2 被告らは、被告菊井が3月10日に原告代表者に対して「社員全員が辞めたい」と言っていると連絡 したことを認めている。 そこで、次の事項について明らかにされたい。 (1)被告菊井が各社員(難波秀明、橋本敏、深水誠、平井大典、半田幹男、梅谷桂子)から原告 会社を辞めたい旨を聞いた時期、場所及びその内容について社員ごとに具体的に明らかにされたい。 (2)上記(1)の際、被告菊井が上記1の各社員について退職しないよう説得したかどうかについて社員 ごとに明らかにされたい。 もし説得しなかったとすれば、原告代表者の根回しの指示があるにもかかわらず、説得しなかった理 由を社員ごとに明らかにされたい。 (3)上記(2)において、被告菊井が退職しないよう説得したにもかかわらず、各社員がその説得に応じ なかったとすれば、その理由について各人ごとに明らかにされたい。 (4)上記(1)の際、各社員が原告会社を辞めた後の就職先(企業名)等について、どのように述べてい たかを各人ごとに明らかにされたい。 3 被告らは、被告OEPが原告会社の各社員(被告菊井、難波、橋本、半田、平井、梅谷)を採用し たことを認めている。 そこで、次のj事項について明らかにされたい。 (1)各社員が被告岡山放送又は被告OEPに履歴書を提出したかどうか。 もし提出したとすれば、提出時期を社員ごとに明らかにされたい。 また、履歴書をすべて裁判所へ提出されたい。 (2)2009(平成21)年4月1日当時の原告会社の各社員と被告岡山放送又は被告OEPとの間の 雇用契約の内容はどのようなものか。各人ごとに明らかにされたい。 各社員との雇用契約書(雇入通知書)又は業務委託契約書等の契約書をすべて裁判所へ提出 されたい。 以上 |