請求の趣旨 1 被告らは原告に対し、各自、金3300万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払い済み まで年5分の割合による金員を支払え 2 訴訟費用は被告らの負担とする。との判決並びに仮執行宣言を求める。 請求の原因 (はじめに) 本件は、長年にわたって原告会社に報道番組の制作等の業務を委託してきた被告岡山放送株式会社 及び被告株式会社オウエッチケイ、エンタープライズが原告会社の最も有力な社員であった被告菊井晴美と 共謀し、原告会社の主要な社員をほとんど引き抜いたうえ、原告会社との自動更新約定のある業務委託 契約等に違反し、正当な理由もなくこれを打ち切ったため、原告会社が事業を継続することがきわめて困難 となって甚大な損害をこうむったことから、被告らに対してその回復を求めるものである。 第1 当事者 1 原告 原告会社は、テレビ放送番組の企画、制作及びテレビ放送番組の放送関係業務要員たるカメラマン等 スタッフの派遣等を業とする有限会社である。 被告らによって主要な社員を引き抜かれる前は、カメラマン6名(菊井晴美、難波秀明、橋本敏、深水 誠、平井大典、半田幹男)、ディレクター1名(梅谷佳子)ほかアルバイト1名を擁していた。上記7名の入 社日は、以下のとおりである。 被告菊井晴美(入社日:昭和63年10月9日) 難波秀明(入社日:平成4年1月6日) 橋本 敏(入社日:平成5年11月1日) 深水 誠 (入社日:平成7年5月1日) 平井大典 (入社日:平成12年2月1日) 半田幹男 (入社日:平成14年1月1日) 梅谷佳子 (入社日:平成8年12月1日) 2 被告ら (1)被告岡山放送株式会社(以下「被告岡山放送」という)は、岡山県及び香川県をサービスエリアとし て、テレビ放送及び一般放送事業等を営む株式会社である。 (2)被告株式会社オウエッチケイ、エンタープライズ(以下「被告OEP」という)は、テレビ番組の企画、制作 等を営む株式会社であり、被告岡山放送の100%子会社である。 (3)被告菊井晴美(以下「被告菊井」という)は、1962年(昭和37)年生まれの男性であるが、1988 年(昭和63)年10月9日にカメラマンとして原告会社に入社した。以後、原告代表者から指導を受け てその右腕となって活動し、原告代表者の信望がもっとも厚かった。本件当時、被告菊井は、原告会 社から「副社長」の肩書を与えられ、他の社員に対する教育や業務指示を行うなど広く原告会社の業 務に従事してきた。 第2 原告会社と被告岡山放送及びOEPとの契約関係等 1 原告会社は、被告岡山放送との間で、遅くとも1989年(平成元)年4月1日以降ほぼ毎年、被 告岡山放送のニュース番組取材製作に関する人材派遣業務に関する契約を締結し、原告会社 のカメラマンを派遣してきた。 原告会社と被告岡山放送とは、2008(平成20)年4月1日にも、おおむね次のとおり、自動更 新約定のある契約を締結した。 第1条 被告岡山放送は原告会社にニュース番組取材製作要員の派遣を求め、原告会社はこれ を引き受ける。 第2条 派遣業務の範囲及び内容は、ニュース番組取材制作要員派遣業務仕様書による。 第3条 原告会社は1か月分の人材派遣代金を一括して毎月末日までに被告岡山放送に請求書 を提出し、同被告は請求書に基づき、翌月25日に現金で原告会社に支払う。 第4条 契約期間は、2008(平成20)年4月1日から2009(平成21)年3月31日までとする が、期間満了1ヶ月までに双方から別段の申し出がない場合は、さらに1年間延長し、その 後もその例による。 【ニュース番組取材要員派遣仕様書】 2、委託の範囲 被告岡山放送が行う通常ニュース番組取材制作に関して、原則として毎週5日、5日のカメラ マンを派遣し、取材制作技術を提供する。 3、派遣料金 1)派遣制作技術派遣費 月額 2,000,000円 原告会社は、同契約に基づき、被告岡山放送へ5名のカメラマン(被告菊井、難波、橋本、深水、 半田)を派遣してきた。 2 原告会社は、被告岡山放送との間で、2008(平成20)年4月1日、被告岡山放送の放送するニュ ース番組のうち「あっぱれジュニア」「ニュース企画」「スポーツニュース」につき、企画、構成、取材、演出、 ビデオテープ収録・編集の業務について、おおむね次のとおり、上記1と同様の自動更新約定のある業 務委託契約を締結した。 第1条 被告岡山放送を委託者とし、原告会社を受託者とする。 第2条 委託の目的物は、被告岡山放送の放送するニュース番組「OHKスポーパーニュース」「スーパ ーニュースSPA」「OHKスポーツスピリッツ」(以下、単に番組という)のうち「あっぱれジュニア」 「ニュース企画」「スポーツニュース」とする。 第3条 被告岡山放送が原告会社に委託する範囲は、前条の番組にかかわる企画、構成、取材、演 出、ビデオテープ収録、編集の業務(以下、本件契約業務)とする。 第4条 本件契約業務の明細は、別に被告岡山放送がその必要に応じ、もしくは原告会社の求めに応 じて作成し、「ニュース番組取材制作委託業務仕様書」のとおりとする。 第5条 原告会社は、被告岡山放送の委託に基づき、誠実に本契約業務を遂行し、これをビデオに収 録・完成させ、約定の期限まで所定の場所にて同被告に納入しなければならない。 第12条 原告会社は、当月の初日から月末までの実績に基づいて、毎月の企画制作報酬を一括し、 翌月5日まで被告岡山放送に請求書を提出して支払いの請求をし、同被告はその請求に基 づいて同月末日までに原告会社に対し現金で支払う。 第15条 契約期間は、2008年(平成20)年4月1日から2009(平成21)年3月31日までとする が、期間満了1ヶ月までに双方から別段の申出がない場合は、さらに1年間延長し、その後も その例による。 【ニュース番組取材制作委託業務仕様書】 2.1)企画取材制作委託費 ディレクター 日額 20,000円まで カメラマン 日額 25,000円まで 原告会社は、同契約に基づき、これらのニュース番組の企画・構成・取材・演出・ビデオテープ収録・ 編集などの業務を行ってきた。これらの業務を主に担当していたのは梅谷であり、被告菊井らカメラマンも 参加していた。 3 原告会社は、2008(平成20)年4月1日、被告岡山放送の放送する「スーパーニュースSPA」の制 作について、生放送の送出や事前VTR制作の業務委託を受け、ディレクター及びカメラマンを派遣する などの業務を行ってきた。 その業務委託料金は、番組制作一式として番組1本あたり32万円、ディレクターがメイン企画(5〜7分 程度)を制作した場合1本7万円であった。 4 原告会社は、被告OEPから、2006(平成18)年12月1日、被告岡山放送報道局の報道ニュース 及びスポーツニュース等特別番組の制作業務について、おおむね次のとおり、上記1と同様の自動更新 約定のある業務委託契約を締結した。 第1条 被告OEPは原告会社に報道ニュース及びスポーツ等特別番組の制作業務を委託し、原告会 社はこれを引き受ける。 第2条 委託業務の範囲及び内容は、報道ニュース及びスポーツ等特別番組制作委託業務仕様書に よる。 第3条 原告会社は1ヶ月分の業務委託代金を一括して毎月末日までに被告OEPに請求書を提出 し、同被告は請求書に基づき、翌月25日に現金で原告会社に支払う。 第4条 契約期間は、2006(平成18)年4月1日から2007(平成19)年3月31日までとするが、 期間満了1ヶ月までに双方から別段の申し出がない場合は、さらに1年間延長し、その後もそ の例による。 【報道ニュース及びスポーツニュース等特別番組制作委託業務仕様書】 3 委託料金 @業務委託費(「特報ズバ!」)税別 カメラ業務 単価22、000円 A D業務 単価20、000円 編集業務 単価22、000円 A業務委託費(「特報ズバ!以外)税別 カメラ業務 単価25、000円 A D業務 単価25,000円 編集業務 単価25、000円 原告会社は、同契約に基づき、報道ニュース及びスポーツ等の特別番組の制作業務を行ってきた。 5 原告会社は、上記1〜4の各契約やその他の発注等に基づいて、被告岡山放送及び被告OEPに対 し、報道番組やスポーツ番組等の制作に必要なカメラマンやディレクターの派遣、番組の企画・取材・編 集等の業務を行った。 原告会社は、2008(平成20)年4月1日から翌年3月末日までの1年間において、被告岡山放送か ら35,382,118円、被告OEPから32,844,420円の合計68,226,538円の報酬を得た。 第3 被告らによる契約打ち切り及び社員引き抜きの経緯 1 被告岡山放送は、2009(平成21)年1月下旬ころ(以下「2009(平成21)年}は略す)、原告会 社の被告菊井を通じて、次年度について報道番組に関する委託料を10%カットしたいと提示してきた。 2 その後、被告岡山放送は、2月27日、被告菊井に対し、次年度について報道のカメラマンを5名から2 名(深水・橋本という名前が上がっていた)削減し3名とする、「スーパーニュースSPA」の制作については委 託しない、その他報道で別注していた業務も委託しないという提示をしてきた。 同日、被告菊井から連絡を受けた原告代表者は、取材・営業活動のために滞在していたベトナムから 直ちに帰国すべく航空券を予約しようとしたが、満席でとれず、結局、3月3日に帰国した。 3 原告代表者は、3月4日、被告菊井と面談し、被告岡山放送の上記提示に対する対応策を協議し た。 原告代表者と被告菊井は、被告岡山放送の提示してきた条件を検討し、被告岡山放送の求めるカメ ラマン2名(深水・橋本)の削減については2名を退職させるか解雇することによって人件費を抑制し、また、 他の諸経費の削減及び原告代表者を含む社員全員の給与カットにより対処し、業務を継続していくことを 確認した。そこで、被告菊井において深水・橋本以外の社員には退職しないよう根回しをした上で希望退 職者を2名募集することや原告代表者を含む社員全員の給与カットもありうること等を確認し、3月6日の 社員全員を集めた会議で発表することにした。 4 3月6日の業務終了後、原告代表者は、原告会社事務所に集まった社員全員に対し、被告岡山放送 による契約条件提示などの経緯を説明し、事業を継続していくために希望退職者を2名募集すること、残 る社員の給与についても減給の可能性があることを発表し、退職者は同月9日までに被告菊井に申し出 るよう伝えた。 なお、後に判明したところによれば、3月6日午後、原告代表者が社員に発表するに先立ち、被告菊井 は被告OEPの池田徹専務取締役から、原告会社のカメラマン3名(被告菊井、半田、平井)と梅谷を被 告OEPが引き取って救済するという話を聞いていた。 5 原告代表者は、3月9日、被告OEPの事務所を訪問し、被告OEPの木村良徳代表取締役及び池 田専務と面談した。 原告代表者は、原告会社がそれまで被告岡山放送から受注していた業務が移転されると考えられる被 告OEPから仕事を回してもらったり、あるいは原告会社のスタッフを入れてもらったりできるかを聞いてみた。 しかし、池田専務らはこれを拒否した。 その際、池田専務は原告代表者に対し、突然「ぶっちゃけた話、(原告会社の社員)全員を引き取るこ とはできないが、引き取る用意はある」と言って、あたかも原告会社の社員を引き抜くかのような口吻を漏ら した。 3月6日の被告菊井と池田専務との間の話など全く知らない原告代表者は、池田専務は原告会社が つぶれると思っているのかと不審に思った。 6 原告代表者は、3月10日、被告岡山放送の報道局に赴き、黒住祐介報道部長及び武本慎一郎報 道局長(2月16日まで被告OEP代表取締役であった)と面談し、改めて次年度の契約条件について尋 ねた。 黒住部長からは、「被告菊井に言ってあるとおり、報道カメラマン2名を削減する、SPA制作の発注をし ない、その他の別注もしない」という回答であった。原告代表者が再考の余地はないのかと重ねて尋ねた が、黒住部長は「決定ですから(交渉の余地はない)」と答えた。 また、その際、黒住部長は「社員を路頭に迷わさないようにしてあげてください」と述べた。 7 3月10日、原告代表者が黒住部長らと面談した後、被告菊井は原告代表者に対し「社員が全員辞 めたいと言っている」という連絡をしてきた。原告代表者は、信頼していた被告菊井に社員の根回しを指 示していたにもかかわらず、全員が辞めるという想像もしない事態になったことに驚愕した。 原告代表者はショックで異常な高血圧となり、3月12日から4月18日まで入院した。 8 原告代表者は、被告菊井から求められ、3月14日、病院から外出の許可を得て、被告菊井及び梅谷 と協議をした。 被告菊井は「社員が全員辞めたいと言っている」と改めて述べ、さらに「被告OEPから救済の話があり、 被告OEPが社員を何人か引き取ってくれるので、頼んでみる」と言ってきた。 3月9日の池田専務の発言や同月10日の黒住部長の発言に加え、被告菊井の同月14日の上記言 動からすれば、黒住部長、池田専務及び被告菊井が意思を通じて、原告会社の社員を被告OEP等に 引き抜いて、原告会社が被告岡山放送や被告OEPからの業務の受注を受けられない状況に陥らせよう としていたことは明らかである。 9 後日判明したことであるが、被告菊井は、3月16日、他の社員らとともに原告会社を退職するつもりで あると黒住部長に伝えた。これに対し、黒住部長は、翌17日、被告菊井をはじめとするカメラマン5名 (半田、平井、難波、橋本)及び梅谷の6名を被告岡山放送又は被告OEPが引き取ると答えていた。 10 3月18日、原告代表者は、原告会社の事務所で黒住部長と会うことになった。 黒住部長は、原告代表者に対し、原告会社の被告岡山放送宛の平成21年4月1日付念書を持参 し、それに押印するよう求めてきた。その念書には次のような記載があった。 「原告会社は、下記の社員6名の平成21年3月31日付辞表を受理し、円満退社したことをお知らせ します。また、原告会社と被告岡山放送との間の労働者派遣契約は下記の6名の退社に伴って円満に 合意解約されたこと、原告会社は既存の上記契約関係につき、今後被告岡山放送に対し何らの請求す べきもののないこと、また、この解約に伴い生ずべき請求のないことも確認いたします。なお、下記社員が被 告OEPへ再雇用されることには全く異存はなく、かつ今後の勤務につき積極的に支援することをお約束い たします。なお、その社員とは、被告菊井、難波秀明、橋本敏、半田幹男、平井大典、梅谷佳子の6名 をいいます。 原告代表者は、「社員はまだ退職していないし、被告岡山放送との契約も継続しているから、応じるわけ にはいかない」と押印を拒否した。黒住部長は「4月でよろしいです」と言って、上記念書を勝手に置いてい った。 11 3月24日、梅谷を除くカメラマン5名が原告会社事務所に「退職願」を持参してきた。退職願の内容 は「このたび一身上の都合によりまして、平成21年3月31日をもって退職いたしたくお願いいたします。」と いうもので、いずれも同じ内容であった。また、梅谷は、同月28日に原告会社事務所に退職願を持参し てきた。 12 原告会社は、3月末日をもって、被告岡山放送との契約を一歩的に打ち切られ、それ以後、同被告 からの人材派遣や業務委託等を受けられなくなった。 被告菊井ら6名の社員は、4月1日から、被告岡山放送ないし被告OEPから直接業務委託を受ける などして、それまでは原告会社が被告岡山放送ないし被告OEPから委託を受けていたニュース番組等の 企画・制作等の業務に従事している。 第4 被告らの行為の違法性 1 上記第3のとおり、被告岡山放送は、2009(平成21)年1月下旬ごろ、原告会社に対し、次年度の 報道番組に関する委託料を10%減らしたいと伝えていたものであるが、同年2月27日になって、突如、カ メラマンを2名減らす、原告会社をスーパーニュースSPAの制作からはずす等といった条件を提示したほか 、遅くとも同年3月10日ころまでに、被告岡山放送の黒住部長、被告OEPの池田専務及び被告菊井 は意を通じ、原告会社の主要な社員を被告OEPへ引き抜き、被告岡山放送の原告会社に対するカメラ マンの派遣業務やニュース番組の企画・制作等の業務の委託を打ち切って被告OEPに対してこれらを担 当させ、かつ、被告OEPからの業務委託を打ち切ることを画策したものである。 2 他方、原告会社は、3月4日、被告岡山放送から上記のような厳しい条件提示について、やむなくこれ を受け入れることになったとすれば、希望退職者の募集や原告代表者を含む社員の給与カットなどにより 何とか事業の継続を図ることを被告菊井とともに確認した。そして、原告会社は、被告菊井に対し、社員 のとりまとめを指示するとともに、同月6日に社員全員にその旨を伝えた。 ところが、被告菊井は、原告代表者との上記確認を無視し、原告会社の指示に反して、ひそかに被告 岡山放送の黒住部長や被告OEPの池田専務と相通じ、主要な社員に対し、原告会社を退職させて被 告岡山放送ないし被告OEPへ移籍することを働きかけた。 3 上記第2のとおり、原告会社は、被告岡山放送ないし被告OEPとの間で、20年以上にわたって、被告 岡山放送のニュース番組の制作に関する人材派遣業務や業務委託を受けてきた。2008(平成20)年 4月1日にも、契約期間を同日から2009(平成21)年3月31までとするが、期間満了1ヶ月までに双 方から別段の申し出がない場合はさらに1年間延長し、その後もその例によるとする自動更新約定のある 契約を締結した。 とこらが、被告岡山放送は、同年2月27日に契約内容の一部変更を提示した以外に、契約更新につ いて期間満了1ヶ月前に別段の申し出をせず、かつ正当な理由もなく同年3月末日をもって契約を一方 的に打ち切り、同年4月1日から被告OEPにそれらの業務を委託した。 また、被告岡山放送及び被告OEPは、原告会社の主要な社員をほぼ全員引き抜き、それまで原告会 社に対して行ってきた業務委託等を打ち切った。 4 以上のような2月27日以降の被告らによる一連の行為によって、原告会社は主要な社員を失って、被 告岡山放送ないし被告OEPからの人材派遣や業務委託を受けることができなくなったほか事業の継続を することも危ぶまれるような事態となり、その結果、後記第6のとおり甚大な損害をこうむった。 また、原告会社がこのような被害をこうむることは、被告らにおいても十分に予見しえたことである。 被告らによる引き抜き及び契約打ち切りという一連の行為は、社会的相当性を逸脱したものであって、 不法行為上も違法といわざるをえない。 第5 被告らの責任原因ー債務不履行又は不法行為 1 被告岡山放送の債務不履行責任又は不法行為責任 (1) 被告岡山放送は、原告会社との各契約に基づき、2009(平成21)年4月1日以降も、原告会社 に対し、ニュース番組取材制作要員(カメラマン)の派遣及び「あっぱれジュニア」「ニュース企画」「スポーツ ニュース」についての企画・構成・取材・演出・ビデオテープ収録・編集の業務を委託すべき義務があるとこ ろ、上記第3及び第4で述べたとおり、これを打ち切り、それらの業務を被告OEPに委託するとともに、原 告会社の主要な社員をほぼ全員引き抜いて、原告会社が上記業務を受託することを不可能にした。 被告岡山放送の上記行為は上記各契約に違反するものであり、債務不履行責任に基づき、同被告は これによって原告会社のこうむった損害を賠償すべき義務がある。 (2) 被告岡山放送の黒住部長は、同被告の報道番組の責任者であるが、それまで20年以上にわたっ て、原告会社が同被告のニュース番組等の制作について取材制作要員(カメラマン)の派遣や番組の企 画・構成・取材・演出・ビデオテープ収録・編集等の業務を受託し、2009(平成21)年4月1日以降も 引き続いてこれらの業務の委託を受けることになっていたにもかかわらず、被告OEPの池田専務及び被告 菊井と意思を通じ、原告会社に対するカメラマンの派遣や番組の企画・制作等の業務の委託を打ち切っ て、被告OEPに対しこれらを担当させるため、原告会社の主要な社員を被告岡山放送または被告OEP へ引き抜いた。 このような黒住部長の行為は、社会的相当性を逸脱した違法なものであって、被告岡山放送は、不法 行為(民法709条又は715条)に基づき、原告会社のこうむった損害を賠償すべき義務がある。 2 被告OEPの不法行為責任 (1) 被告OEPは、原告会社との自動更新約定のある契約に基づき、2009(平成21)年4月1日以降 も、原告会社に対し、カメラ、AD、編集等の業務を委託すべき義務があるところ、上記第3及び第4で述 べたとおり、これを打ち切ったうえ、原告会社の主要な社員をほぼ全員引き抜いて、原告会社が上記業務 を受託することを不可能にした。 被告OEPの上記行為は上記契約に違反するものであり、債務不履行責任に基づき、同被告はこれに よって原告会社のこうむった損害を賠償すべき義務がある。 (2) 被告OEPの池田専務は、原告会社が被告岡山放送の条件提示により厳しい経営環境に置かれる ことに乗じ、被告岡山放送が原告会社に委託していた業務を被告OEPにおいて奪い取ることを企て、被 告菊井に対し、原告会社のカメラマン3名(被告菊井、半田、平井)と梅谷を被告OEPが引き取って救 済するなどと伝え、被告菊井から他の社員に対し退職することを働きかけさせた。その上で、池田専務は、 黒住部長及び被告菊井と意思を通じ、原告会社に対するカメラマンの派遣や番組の企画・制作等の業務 の委託を打ち切らせて、被告OEPにこれらを担当させるため、原告会社の主要な社員を被告岡山放送ま たは被告OEPへ引き抜いた。 このような池田専務の行為は、社会的相当性を逸脱した違法なものであり、被告OEPは不法行為(民 法709条又は715条)に基づき、原告会社のこうむった損害を賠償すべき義務がある。 3 被告菊井の不法行為責任 被告菊井は、原告会社の社員の中でもっとも原告代表者の信望が厚く、被告岡山放送から厳しい条件 提示を受けて原告代表者と協議をしたときも、原告会社の事業存続を確認するとともに、原告会社から 社員のとりまとめを指示されていた。ところが、被告菊井は、原告代表者との上記確認を反故にし、原告 会社の指示に反し、ひそかに黒住部長や池田専務と意思を通じ、他の社員に対して原告会社を退職して 被告岡山放送または被告OEPへ移籍することを働きかけたものである。 このような被告菊井の行為は、社会的相当性を逸脱した違法なものであり、被告菊井は不法行為(民 法709条)に基づき、原告会社のこうむった損害を賠償すべき義務がある。 第6 原告会社のこうむった損害 1 2008(平成20)年度の原告会社における売上げのうち大半を占める被告岡山放送及び被告OEP 分は、合計68、226,538円であった。 そのうち報道番組に関する売上げは以下のとおりである。 @ 報道カメラマン派遣(5名) 25,200,000円 A ニュースSPA制作関係 18,602,182円 B その他の発生 6,470,100円 (合計) 50,272,282円 原告会社はこれを全部失ったが、被告らによる違法行為がなければ、被告岡山放送が原告会社に当 初提示していた条件(報道番組に関する委託料10%カット)のとおりであったとしても、原告会社の次年 度の売上げは、次の計算式のとおり、63、199、310円であったと見込まれる。 68,226,538円ー50、272、282円×0,1=63,199,310円 他方、7人の社員が退職しなければ、2009(平成21)年の給与額が前年度とまったく同じであったとし ても、7人分の1年分の人件費(給与・賞与・各種保険料)として32,799,311円がかかることになる。 したがって、被告らの違法行為がなければ、原告会社は2009(平成21)年度において、30、399,99 9円(=63,199,310円ー32,799,311円)の営業利益が確保できたはずである。 2 これまでの原告会社と被告岡山放送及び被告OEPとの長年の契約更新の事実に鑑みれば、被告らに よる違法行為がなければ、原告会社は、被告岡山放送らとの間で、2009(平成21)年度以降も少なく とも3年間は契約関係を継続し、業務委託等を受けることができたと推認するのが妥当である。 そして、原告会社が3年間で失うことになる営業利益は、91,199,997円(=30,399,999円× 3年)となることからすれば、原告会社の被った損害は3000万円を下ることはないというべきである。 3 弁護士費用 被告らに負担させるべき弁護士費用は、上記3000万円の1割にあたる金300万円が相当である。 4 少括 したがって、原告会社は被告らに対し、3300万円を請求する。 第7 結論 よって、原告は被告らに対して請求の趣旨記載の支払いを求めて、本訴に及んだ。 以上 |